10.22.2014

須賀敦子ふたたび

一気に季節が進みました。
きょうは冷たい雨。コートを一枚重ねてもいいくらい。
けれど、こういう鈍色のうすら寒い日はけっして嫌いじゃない。
家にこもって黙々と文字を打っているのが、
とても正しい行為のように思えるから。

SAD、季節性情動障害というやっかいな不調があるけれど、
私はどうやら太陽光ランプのお世話になることはなさそう。
うす暗い日のほうが自分のバイオリズムと同調してくれるし、
世の中の喧噪も控えめで、いつもより世界が近しく感じられる。

最近、須賀敦子の本を見つけて読んでいる。
『須賀敦子ふたたび』という、KAWADE夢ムックの一冊。
須賀敦子のことは、名前だけは90年代から知っていたものの、
本格的に興味をもったのはアメリカから帰ってきてから。
全集の中のいくつかの文章を読み、その息の長い端正な文章と、
垣間見える知性にたちまち虜になった。

いま読んでいるムックでは、若松英輔さんの語る、
須賀敦子の霊性と文学についての章がとくに興味深かった。
わたしは以前から、作品そのものをまず読むより、その作者の
エッセイや関連本を読んでから作品へと興味が移ることが多い。
このムックでも、各人の須賀敦子観を通して須賀敦子のさまざまな面が紹介されており、
彼女の本をいっそう読みたくなった。

今年の残りは、日本の作家は須賀敦子ひとりを
読み進めてもいいかもしれない。
それぐらいじっくりと、この希有な作家とつき合ってみたい気がしている。



10.21.2014

雨の夜に

私はお酒が強くないし声も小さいので、おおぜいがわーっと参加する飲み会は
若いころから苦手。
でも、少人数でのんびりお酒を楽しむのは好きだし、
喫茶店でコーヒーを飲む時間はもっと好き。

小さな声でゆっくり話す大人に出会えたときはとてもうれしくて、
理解者を得た気がしたなあ。
仕事の後、コーヒーを飲んだりご飯を食べたりしながら、
音楽のことをいろいろ教えてもらったなあ。

私も言いたいことをうまく口にできないから、結局書いて伝える仕事を選んだんだよ...
と、そんなことを天に向かって伝えたい、雨の日の夜。

今日は、お世話になった人の命日でした。

10.01.2014

秋の赤城山へ

お彼岸の連休、赤城山へ行ってきました。
目的は季節の花と、毎年秋に飛来する渡りチョウ・アサギマダラ。



彼岸に咲く彼岸花。日に透ける赤い花が鮮やか。



フジバカマの花蜜を吸うアサギマダラ。
本州から喜界島、南西諸島や台湾まで、千キロ以上も海を越えて渡る。
人を恐れることなく、たくさんのチョウがすぐそばをひらりひらりと飛んでいた。

生態調査のためのマーキングのお手伝いをさせてもらいました。
マジックで羽に直接番号を書き込む。

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私の書いた番号。
痛くないのか?と思ったけれど、大騒ぎすることはなく、
ただ、ペン先が羽にこすれるとき、気持ち悪そうに身をよじらせていた。
この番号のチョウがまた捕獲されたら、私にも連絡が来るのです。



秋海棠



秋明菊



秋明菊・その2
Japanese Anemoneという英名で、シカゴの植物園にも咲いていたのを思い出す。


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おまけ。
高崎の老舗パスタ店「シャンゴ」の「シャンゴ風パスタ」。
デミグラス味のミートソース+カツの重量級。

高崎市はパスタが有名な町なんだとか。アルデンテより柔らかめの麺で、なんだか懐かしい味がしました。

9.29.2014

デザイン変更、早い秋

ブログのデザインを変更しました。

書く内容を少し変えたかったのが理由。
アメリカ時代の記事と日本での記事が混在しているので読みにくく、
一時はブログを移行しようと思ったりもしたけれど、
それも労力もかかるので、デザインを変えて区切りとすることにした。
秋らしい紅葉柄で、気分一新。
日々、暮らしの中で思うことなどをもっと書いていきたい。
花の写真は頻度は減ったが相変わらず撮っているので、それも載せるつもり。
あくまでも、徒然なるままに。

今年は残暑がなく、過ごしやすい9月だった。
8月の最終週にぐんと気温が下がり、そのまま夏が消失した。
彼岸の頃には涼しくなってずいぶん経っていたので、
まだお彼岸であるのが信じがたいような気持ちだった。
今は金木犀が咲いている。
寝室にしている西の部屋のすぐ下に金木犀が植えてあり、
毎朝、窓を開けると、ひんやりした空気とともに甘い香りが流れ込んでくる。
なんて贅沢なんだろう、としばらくうっとりする。
一方、東のリビングの窓の先には百日紅の名残りが咲いていて、
案外暑くなる日もあり、二つの季節の挟間にいるのを感じる。
まるで、この家の中に季節の境界線が通っているかのように。

電車の駅まで歩くあいだも、甘い香りはずっとついてくる。
このあたりは都区内だが、戦時中は疎開先とされていた地域なので、
古くて大きな家が多い。
そうした家々の庭に金木犀の大木があり、
その香りの鎖が駅まで連々と連なっているのだ。
この時期にはじめて日本に来た外国人は、なんの匂いだろうと
びっくりするんじゃないだろうか。

これから2ヵ月ほど、一年でいちばん好きな季節がつづく。
思えば梅雨からこっち、ずっと秋のことばかり
考えていたような気もする。

7.25.2014

もう夏

気がつけば、夏の盛り。

梅雨明け後の関東は毎日猛烈に暑い。
でも、帰国直後に較べればかなり楽。
去年はまだ「なんで家の中で汗をかかなくちゃいけないの?」なんて思っていたぐらいだから。
日本の夏の過ごしにくさは、一にも二にも湿度だと思う。
体の中に熱がこもってぐったり→ 汗をたくさんかいて冷える。
このくり返しは、ほんとうに精気を奪われる。
涼しいカナダやスコットランドあたりに逃避したい。

今週は少し時間ができたので、前からしたいと思っていたこと、
家計簿やレシピの整理、ノンフィクションものの読書などに取りかかっていた。
レシピは、残念だけれどアメリカのものはすっかり見なくなって。
食材が手に入らないか、あっても高価なので仕方ない。
ビーツや洋梨、さまざまなナッツ類、中東系の食材をつかった料理は
めったに作らなくなってしまった。

代わりに最近参考にしているのは、旬の野菜をシンプルに扱う方々の料理本。

食記帖

細川亜衣さんの「食記帖」は、日記仕立ての構成。
家族に出す普段の食事、客人にふるまうもてなしの食事、
どれもさすが料理家のお料理で、文章を追っているだけでも胸を躍らされる。
熊本の旧家に嫁いでまもない細川さんの、
新しい土地の気候、植物、食材に向けるまなざしの生々しさが印象的。
料理とはたんに材料と調味料でできているわけではないのだと、
あらためて感じさせてくれる。

この2冊もよかったな。

『土井家のおいしいもん』土井善晴
『長尾智子の料理1、2、3』長尾智子

最近は写真のない料理本をいいなと思う。

7.01.2014

hydrangea







(6月29日、鎌倉・成就院にて)





6.24.2014

出雲旅行その1


最後のエントリーから、気づいたら1ヶ月以上も経っていました。

とくに忙しくしていたわけではないのだけれど、あれやこれやの雑事とライフイベントが重なり、落ちついた時間が取りにくかったのです。
ワールドカップの試合はちょこちょこ観ています。日本はグループリーグ残り1試合、勝っても負けても、未来につながるような、全力を出し切った試合を見せてほしい。

先月の島根旅行がとてもよかったので、記憶が薄れる前に。
島根ははじめて。中国地方の育ちなのに、山陰は案外なじみがなく、子供のころ、林間学校で砂丘を見たのと、家族旅行で皆生温泉に行ったぐらい。いまは県境の中国山地を越えるいい道路ができたので、ずいぶん行きやすくなったようです。
今回は二日間かけて、米子、出雲、奥出雲、松江へ。飛び石のように離れた各所の見どころを線で結ぶように、レンタカーで西へ東へと駆けめぐってきました。

初日の午前中は、米子と美保関。
早朝8時半、米子空港に降り立つ。魚市場へ直行して朝食。「モサエビあります」の張り紙に心躍らせ、モサエビのむき身丼(頭は唐揚げにしてくれた)、旬のシロイカなど。



美保神社を参拝。からりと晴れ渡った青空とぴかぴかの新緑が、That's 五月晴れ、鮮やかなコントラストが目に眩しい。カメラのF値はもちろん教本どおり、"Sunny F16"
鳥居前の売店で、「煮干しよりも上品でおいしい」アジ干しをお土産に買い、1時間ほど西に走って出雲へ移動。





大社近辺は、平日にも関わらずかなりの賑わいでした。土日は駐車スペースを見つけるだけでも苦労しそう。
正門前にスターバックスがあり、「こんなところにも……」とびっくりする。出店する側の事情は分からないでもないが。

割子そばのお店「かねや」で昼食をとり、大社内をぐるりと見学。
檜皮葺(ひわだぶき)の屋根がかっこいい。檜の立ち木の表皮を剥いで使うと聞くと痛々しいようだけど、木を切り倒さずにすむ、環境によい方法なのだそう。
ここでとくに印象に残ったのは、本殿の裏に構える八雲山。まさに聖域というか、得体の知れないような神々しさで、じっと見ていると鳥肌が立つような雰囲気があった。
それに較べると、有名な大しめ縄のある拝殿は、表向きの営業の顔という感じ。

古代出雲歴史博物館、伊佐の浜にも立ち寄る。ここは時間が許せば、もうちょっと長く滞在したかった。






出西窯へ。工房と登り窯を見せていただく。出雲平野の田んぼが見渡せる、のんびりしたとてもいいところ。
休憩所でお茶をいただいたときの、そば猪口型カップの手どりがよく気に入ったので、飴釉と黒釉の色違いを2つ、クリーム色のポットと一緒に買い求めた。
ほかに出西生姜を使ったおいしい生姜糖など。

夕方、いよいよ奥出雲へ。今夜の泊まりは、斐伊上温泉の「かたくりの里たなべ」。
国造り神話の舞台となった船通山の、緑深き山あいの宿。
民宿なのでトイレや洗面所は共同だけれど、さっぱりと掃除が行き届いて、女性でも泊まりやすい。
携帯の電波も入らない秘湯の宿。ただし、泉質のよさで知られていて、登山客や温泉マニアのあいだでは有名なのだそう。
新鮮なイワナのお刺身、山菜、手打ちそば、たっぷりのおいしい夕食。ご飯は奥出雲の仁多米。東京の家で炊く仁多米よりずっと味がよいので尋ねたら、すぐそばで湧き出る温泉水を使っているそうです。それはおいしいはずだ……

ここでの心残りは、星空を眺めるのを忘れたこと。朝がものすごく早かったので、夕食後そうそうに寝てしまった。空気の澄んだ、いい夜だったのになあ。
次はかならず。